公認会計士試験の論文式試験が終わると、息をつく間もなく監査法人のリクルート活動が始まる。
「試験が終わってから、ゆっくり就職先を考えればいい」
そう思っていると、参加したかったイベントの予約が埋まり、十分な情報を集められないまま面接を迎えることになりかねない。
私は監査法人に入社してから3年間、所属事業部のリクルート活動に参加していた。自分がリクルートを担当した就活生が、実際に同じチームの後輩として入社してきたこともある。
この記事では、私自身の経験に加え、リクルートを担当していたマネージャーやパートナーから聞いた話も踏まえ、監査法人のリクルート活動がどのようなスケジュールで進むのかを解説する。
なお、具体的な日程や採用ルールは年度・地域・監査法人によって異なる。就職活動を始める際は、必ず各法人や公認会計士協会、資格予備校などが発信する最新情報も確認してほしい。
監査法人のリクルート活動は大きく2つの期間に分かれる
公認会計士試験合格者を対象とした監査法人のリクルート活動は、大きく次の2つの期間に分かれる。
- 論文式試験直後のイベント期間
- 合格発表後の面接・選考期間
例年、公認会計士試験の論文式試験は8月に実施される。
そして、試験が終わるとすぐに、各監査法人による説明会や座談会などのリクルートイベントが始まる。その後、11月頃の合格発表を経てリクルート活動が再開され、面接・内定へと進んでいく。
試験前から応募先を決める必要はないが、少なくとも「試験が終わったら、すぐにリクルート活動が始まる」という事実は知っておいた方がよい。
2026年の論文式試験は8月21日(金)~23日(日)、合格発表は11月20日(金)に予定されている。試験日程は変更される可能性もあるため、公認会計士・監査審査会の最新情報を確認してほしい。
8月:論文式試験が実施される
公認会計士試験の受験生にとって、最大の目標は当然ながら論文式試験に合格することである。
試験直前は、就職活動のことまで考える余裕がない人も多いだろう。まずは試験に集中するという方針で問題ない。
ただし、試験が終わったら真っ先に、各監査法人の採用サイトやマイページには登録しておきたい。
また、資格予備校や受験生同士のつながりから、採用イベントの情報が共有されることもある。試験勉強の妨げにならない範囲で、情報を受け取れる状態だけはつくっておこう。
8月下旬:論文式試験後、すぐにリクルート活動が始まる
論文式試験が終わると、各監査法人のリクルートイベントが始まる。
代表的なイベントは次のとおりである。
- 法人説明会
- 事業部別説明会
- 業界別・テーマ別の座談会
- オフィス見学
- 若手職員との交流会
- 個別面談
近年は、リクルート活動を実施できる期間が限定される傾向にあり、イベントが短期間に集中しやすい。
そのため、人気のイベントや参加しやすい時間帯は、予約開始後すぐに枠が埋まることがある。
論文式試験が終わった直後は、緊張から解放されて休みたい人も多いだろう。手応えがなく、就職活動に気持ちを切り替えられない人もいるかもしれない。
しかし、ここで動き出しが遅れると、各法人を比較するための機会そのものが減ってしまう。
試験の出来に自信がなかったとしても、合格発表までは結果が分からない。少なくとも必要な情報収集とイベント予約は進めておいた方がよい。
9月頃:説明会や個別面談で志望先を絞っていく
試験直後のイベント期間では、単に各法人の説明を聞くだけでなく、どの法人・事業部・業界に興味があるのかを少しずつ明確にしていく。
大手監査法人は、法人単位で見ればどこも似ているように見えるかもしれない。
しかし、実際には次のような違いがある。
- 得意とする業界
- 主要クライアント
- 事業部の規模や雰囲気
- 若手に任される仕事
- IPO、IFRS、アドバイザリーなどの経験機会
- 配属の決まり方
- 繁忙期や働き方
ここで大切なのは、「どの法人が一番有名か」だけで判断しないことである。
監査法人に入社した後、日常的に一緒に働くのは法人全体ではなく、配属された事業部や監査チームのメンバーだ。自分が興味を持てる業界や案件があるか、どのような人と働きたいかという視点も持っておきたい。
複数の法人・事業部のイベントに参加し、比較材料を集めておこう。
10月頃:いったんリクルート活動が落ち着く
試験直後のイベント期間が終わると、合格発表まではリクルート活動がいったん落ち着く。
この期間には、イベントで得た情報を整理しておきたい。
例えば、法人ごとに次の項目をメモしておくと比較しやすい。
- 興味を持った事業部・業界
- 話を聞いた職員の名前と所属
- 印象に残った案件
- 配属に関する説明
- 働き方や繁忙期
- 自分が魅力を感じた点
- 気になった点
- 次に確認したい質問
複数のイベントに参加すると、後から内容が混ざりやすい。合格発表後は短期間で志望先を決める必要があるため、記憶が新しいうちに整理しておこう。
また、面接で聞かれそうな内容についても準備を始めたい。
監査法人の選考では、一般事業会社の就職活動ほど作り込まれた志望動機を求められないこともあるが、「なぜ公認会計士を目指したのか」「なぜこの法人・事業部なのか」「どのような仕事に興味があるのか」程度は、自分の言葉で説明できるようにしておくべきである。
11月頃:論文式試験の合格発表後、リクルート活動が再開する
論文式試験の合格発表後、監査法人のリクルート活動が本格的に再開する。
ここから面接までは、それほど時間がない。
年度によって異なるものの、合格発表から1~2週間ほどで面接が始まることもある。合格してから志望先を一から考え始めるのでは、十分な比較や準備ができない可能性が高い。
試験直後のイベント期間で情報を集め、合格発表までの間に志望先を整理しておくことが重要である。
合格発表後には、個別面談や面接前のイベントが開催されることもある。関心のある法人からの案内を見落とさないよう、メールやマイページをこまめに確認しよう。
11月下旬~12月頃:面接・内定
合格発表後の短いリクルート期間を経て、各監査法人の面接が始まる。
面接回数や形式は法人によって異なるが、パートナーが面接を担当するケースが多い。
ここで注意したいのは、法人側が就活生を評価しているのは、正式な面接の場だけではないということである。
試験直後の説明会や座談会、個別面談の段階から、職員は就活生の人柄や受け答えを見ている。イベントを単なる情報収集の場だと考え、極端に気を抜くのはおすすめしない。
リクルート期間外にイベントが開催されることもある
監査法人との接点は、8月の論文式試験後から始まるとは限らない。
法人や事業部によっては、特定の大学、ゼミ、資格予備校などを対象に、リクルート期間外でも法人見学や交流イベントを開催していることがある。
このようなイベントは、必ずしも採用サイト上で広く告知されるとは限らない。
大学やゼミの先輩、資格予備校の講師、受験生同士のつながり、SNSなどを通じて案内が共有されることもある。
情報を得られるかどうかで、法人研究の進めやすさに差がつくことは事実である。ただし、特別なつながりがなければ採用されないという意味ではない。通常の説明会や座談会でも、必要な情報収集とアピールは十分にできる。
大切なのは、受け身にならず、自分から情報を取りにいくことである。
まとめ:論文式試験後のスタートダッシュが重要
監査法人のリクルート活動は、一般的な新卒採用と比べて期間が短い。
特に注意したいのは、次の3点である。
- 論文式試験後、すぐにイベントが始まる
- 人気イベントの予約枠は早く埋まることがある
- 合格発表から面接までの期間も短い
試験後は休みたい気持ちも分かる。
それでも、数日間だけ完全に休んだら、リクルート活動へ気持ちを切り替えた方がよい。ここで集めた情報や職員との接点が、法人選びだけでなく、入社後の配属希望を伝えるうえでも役立つ可能性があるからだ。
監査法人選びは、会計士としてのキャリアを決める最初の大きな選択になる。
限られた期間の中でも納得のいく判断ができるよう、早めに準備を始めてほしい。
なお、監査法人側による就活生の評価は、正式な面接よりも前から始まっている。説明会や座談会で何を見られているのか、希望するチームに近づくためにどう動けばよいのかは、後編の「監査法人のリクルートでは何を評価される?元リクルーターが見ていたポイント」で詳しく解説する。


