監査法人からの転職を考え、勇気を出して転職エージェントとの面談まで進んだ人もいるだろう。
※まだ転職エージェントとの面談に踏み切れていない人は、まず以下の記事を読んでみてほしい。
しかし、いざ面談を終えると、次々に求人を紹介され、こう戸惑うかもしれない。
「紹介された会社には、すべて応募した方がいいのか」
「エージェントの言うとおりに転職活動を進めて大丈夫なのか」
「そもそも、転職エージェントには何を頼めるのか」
転職エージェントは、うまく活用すれば非常に心強い存在である。一方、言われるがままに転職活動を進めてしまうと、自分の意思とは異なるペースで選考が始まることもある。
本記事では、実際に監査法人から転職した筆者の経験をもとに、転職エージェントの具体的な活用方法と、利用する際の注意点を解説する。
大前提:転職エージェントに急かされても、自分のペースを守る
最初に押さえておきたいのは、転職エージェントと転職希望者では、必ずしも利害が完全に一致するわけではないということだ。
多くの転職エージェントは、紹介した人材が企業に入社することで、採用企業から成功報酬を受け取っている。そのため、担当者によっては、求人への応募や内定承諾をやや急かしてくることがある。
もちろん、転職エージェントが急ぐことには、正当な理由もある。
人気のある求人は募集が早期に終了する可能性があり、選考のタイミングを逃せば応募できなくなることもある。また、転職活動に踏み切れず、いつまでも動けない求職者の背中を押すことも、エージェントの役割の一つだろう。
それでも、最終的に転職するのは自分である。
転職時期や応募先、選考を受ける順番をエージェント任せにせず、自分が納得できるペースで進めることが大切だ。
「まだ情報収集の段階です」
「応募する企業は、自分で比較してから決めます」
「私の承諾なしに書類を提出しないでください」
必要に応じて、このような希望を明確に伝えておこう。
転職エージェントは、転職活動の意思決定者ではない。あくまで、自分の転職活動を支援してもらうためのパートナーである。
転職エージェントの4つの活用方法
筆者が実際に転職活動をした経験から考えると、転職エージェントの主な活用方法は、次の4つに整理できる。
- 情報収集
- 応募書類の添削
- 面接対策
- 選考スケジュールの統括
それぞれ詳しく解説していこう。
① 情報収集
転職エージェントの最も基本的な役割は、求人や企業に関する情報を提供することである。
初回面談では、これまでの経歴だけでなく、興味のある仕事、得意なこと、今後身につけたい能力などをヒアリングしてくれる。
監査法人で働いていると、自分の経験が監査法人の外でどのように評価されるのか、分かりにくいことも多い。
たとえば、次のような経験は転職市場でも評価される可能性がある。
- 主査として監査チームを管理した経験
- クライアントや上司との折衝経験
- IFRS導入やIPO支援など、監査以外の業務経験
- 特定業界に関する知識
- 業務改善やデータ分析、ITツールの活用経験
転職エージェントとの面談を通じて、自分では当たり前だと思っていた経験が、転職市場における強みだと気づくこともある。
さらに、興味や強み、希望する年収、労働環境などを伝えれば、それらの条件に合う企業をリサーチして紹介してもらえる。
転職エージェントは企業の内部情報を持っている
企業の公式サイトや求人票を読むだけでは、実際の働き方や組織の雰囲気までは分からない。
一方、転職エージェントは、過去にその企業へ人材を紹介した実績や、企業の採用担当者とのやり取りを通じて、一般には公開されていない情報を把握していることがある。
たとえば、次のような情報だ。
- 実際の年収水準
- 残業時間や働き方
- 組織やチームの雰囲気
- 評価されやすい経歴
- 選考で重視されるポイント
- 企業や部門の強み・弱み
- 過去の面接で聞かれた質問
筆者が転職活動をした際には、興味のある事業内容や特徴を持つ企業を複数ピックアップしたうえで、年収水準、労働環境、社風、各社の強み・弱みを一覧にしてもらった。
自分だけで一社ずつ調べるよりも効率がよく、応募先を比較するうえで非常に役立った。
気になる企業を紹介されたら、求人票を読むだけで終わらせず、担当者に踏み込んで質問してみよう。
紹介される求人が転職市場のすべてではない
一方で、転職エージェントから紹介される企業には偏りが生じる可能性がある。
エージェントが保有する求人は、取引関係のある企業に限られる。担当者が特定の業界や企業を強く勧める背景に、求職者との相性だけでなく、エージェント側の事情が含まれている可能性も否定できない。
そのため、最初から一社の転職エージェントだけを頼り切るのではなく、複数のエージェントから話を聞くことをおすすめする。
異なるエージェントから同じ企業について聞けば、情報の共通点や食い違いも見えてくる。総合型と業界特化型を併用し、それぞれの情報を比較するのも有効だ。
特にコンサルティング業界への転職に興味がある人は、コンサル転職に特化したエージェントも選択肢となる。
② 応募書類の添削
転職エージェントには、履歴書や職務経歴書、企業によっては志望動機書など、応募書類を添削してもらえる。
監査法人で働いていると、「インチャージ」「調書」「往査」といった監査業界の言葉を、説明なしに使ってしまいがちだ。
しかし、採用担当者が監査業務に詳しいとは限らない。監査法人での経験を、転職先でも価値が伝わる表現に置き換える必要がある。
たとえば、「主査を担当した」とだけ書くよりも、チームの人数、担当したクライアントの規模、自分が担った役割、実施した改善、その結果まで具体的に書いた方が、経験の価値は伝わりやすい。
転職エージェントは多くの応募書類を見ているため、どのような内容が評価されやすいか、どの部分が伝わりにくいかを、採用側の視点から指摘してくれる。
書類の誤字脱字を直してもらうだけでなく、次のような点を確認してもらうとよい。
- 監査法人での経験が、業界外の人にも伝わるか
- 自分の強みを裏づける具体的なエピソードがあるか
- 志望動機とこれまでの経歴に一貫性があるか
- 応募先の企業が求める人物像に合っているか
- 面接で深掘りされそうな部分はどこか
注意:書類の提出権限は自分で握っておく
ここで一つ、筆者の実体験をもとに注意しておきたいことがある。
筆者が転職活動をしていた際、志望動機書をエージェントに送ったところ、内容が完成したと判断され、筆者の最終確認を待たずに応募先へ提出されそうになったことがある。
筆者としては添削を依頼しただけであり、まだ応募する企業やタイミングを最終決定したつもりはなかった。そのため、肝を冷やした。
もちろん、すべてのエージェントがこのような動きをするわけではない。しかし、担当者が「書類を受け取った=応募の意思がある」と認識する可能性はある。
応募書類を送る際は、次のように目的を明記しておこう。
「今回は添削のみをお願いします。私が明示的に承諾するまで、企業への提出はしないでください」
応募の可否とタイミングは、転職活動全体を左右する。エージェントの動きを自分でしっかりとコントロールすることが大切だ。
③ 面接対策
転職エージェントは、応募先企業との面接に先立ち、面接で注意すべきポイントを教えてくれる。
企業によっては、過去の面接で聞かれた質問や、面接官が重視するポイントに関する情報を持っていることもある。
また、エージェントによっては模擬面接を実施してくれる。志望動機や転職理由を実際に声に出して説明し、第三者からフィードバックを受けられるため、一人で準備するよりも改善点を見つけやすい。
特に、コンサルティング業界への転職を考えている場合、エージェントによる面接対策の価値は大きい。
ケース面接とは
コンサルティングファーム、特に戦略コンサルティングファームの選考では、「ケース面接」が実施されることが多い。
ケース面接とは、ビジネス上の課題に対して、限られた時間で前提を整理し、原因を分析したうえで、解決策を論理的に提案する面接である。
たとえば、「あるコンビニエンスストアの売上を3年間で20%伸ばすにはどうすればよいか」といった課題が出される。応募者は売上を客数や客単価などに分解し、課題を特定したうえで、解決策を論理的に提案する。
ケース面接は、事前対策なしで対応するのが難しい。対策本を読んで考え方を学ぶことも有効だが、本番では、面接官との対話をしながら回答を組み立てる必要がある。
そのため、知識のあるエージェントと模擬面接を重ね、実際に考えを口に出す練習をすることが、本番に向けた有効な対策となる。
コンサル業界への転職を検討しており、求人紹介だけでなくケース面接の対策も受けたい人は、コンサル転職に特化したMyVisionへ相談してみるのも一つの選択肢である。
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④ 選考スケジュールの統括
複数社の選考を同時に進める場合、転職エージェントは全体のスケジュールを管理する役割も担ってくれる。
一般に、内定を出した企業が、内定承諾を何か月も待ってくれるとは限らない。
第一志望の企業がまだ一次面接の段階なのに、別の企業から先に内定が出れば、すべての選考結果を見てから転職先を決めることが難しくなる。
複数社から内定を得たうえで比較したい場合は、なるべく近い時期に最終面接や内定が重なるよう、選考のペースを調整する必要がある。
しかし、企業によって面接回数や選考期間は異なる。連絡手段も、メール、LINE、企業の採用サイトなどさまざまだ。これらをすべて自分で管理しながら、現職の仕事と面接対策を並行するのは想像以上に煩雑である。
転職エージェントを経由すれば、次のようなやり取りをまとめて任せられる。
- 応募書類の提出
- 書類選考や面接結果の連絡
- 面接日程の調整
- 選考スピードの調整
- 企業への質問
- 内定後の条件確認
- 内定承諾期限に関する交渉
特に、監査法人の繁忙期に転職活動を進める場合、日程調整の窓口を一本化できるメリットは大きい。
応募段階では、窓口を整理する
情報収集の段階では、複数の転職エージェントを利用して比較することをおすすめした。
一方、実際に応募する段階では、どの企業にどのエージェント経由で応募するのかを整理しておく必要がある。
同じ企業へ複数のエージェントから重複して応募すると、企業側を混乱させるだけでなく、紹介手数料をめぐる問題につながる可能性もある。
また、応募先を複数のエージェントに細かく分散させすぎると、各社の選考状況を踏まえたスケジュール調整が難しくなる。
必ずしも、すべての応募を一社のエージェントにまとめなければならないわけではない。しかし、転職活動全体を統括してもらいたいのであれば、中心となるエージェントを一社決め、他社経由の選考状況も含めて共有しておくとよい。
ただし、エージェントが直接日程を調整できるのは、原則としてそのエージェントを経由して応募した企業に限られる。
「情報収集では複数社を比較し、応募段階では窓口を整理する」
この使い分けが重要である。
まとめ:転職エージェントをうまく使いこなそう
転職エージェントには、主に次の4つの活用方法がある。
- 自分の強みや希望に合う企業の情報を集める
- 履歴書や職務経歴書などの応募書類を添削してもらう
- 模擬面接やケース面接の対策をしてもらう
- 複数社の選考スケジュールを調整してもらう
これらのサービスは、基本的に求職者であれば無料で利用できる。
自分だけでは集めにくい情報を得られ、書類や面接の準備を支援してもらえるだけでなく、企業との面倒な連絡も任せられる。転職活動において、非常に便利な存在であることは間違いない。
一方で、エージェントから紹介された企業が自分にとって最適とは限らない。担当者に急かされたからといって、十分に納得しないまま応募や内定承諾をする必要もない。
大切なのは、転職エージェントに転職活動を委ねるのではなく、自分が主導権を握ったうえで、その情報や機能を賢く利用することである。
複数のエージェントから情報を集め、分からないことは遠慮なく質問し、応募先とタイミングは自分で決める。
転職エージェントをうまく使いこなし、納得できる転職につなげてほしい。


